コロナ ウイルス は なぜ 発生 した のか。 COVID

新型コロナウイルスの発生源はどこですか?

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本記事は『財新』の提供記事です 石正麗は、中国科学院の新興および劇症ウイルスとバイオセーフティーの重点実験施設の主任や武漢ウイルス研究所新興感染症研究センターの主任、河北省科学技術庁「2019新型肺炎救急科学技術難関攻略研究プロジェクト」救急難関攻略専門家グループのグループ長を務めている。 新型コロナウイルス肺炎の感染拡大が厳しい状況を迎える中で、彼女の所属する実験施設が新型コロナウイルスの発生源ではないか、という「疑惑」の渦中へと巻き込まれた。 「新型コロナウイルスは人間が造った生物化学兵器だ」「新型コロナウイルスは武漢ウイルス研究所の実験施設から流出したものだ」……。 新型コロナウイルスの感染が爆発的に拡大して以降、新型コロナウイルスと中国科学院が武漢に持つウイルス研究所との間に関連があるとソーシャルメディアで発信する人が後を絶たない。 公開されている資料によれば、中国科学院が武漢に持つウイルス研究所は中国で唯一のバイオセーフティーレベルP4の実験施設を有している。 石正麗は当該実験施設の副主任であり、バイオセーフティーレベルP3の実験施設の主任だ。 P4とは国際基準で危険度が最も高い病原体を扱えるバイオセーフティーレベル(BSL)の最高防護レベルを表し、高度に危険な研究やいまなおワクチンや治療方法が知られていない病原体を専門的に扱う研究施設で用いられる。 なぜ武漢に集中して新型ウイルスが拡散しているのか 噂は人々の心の中に疑惑を植え付け、想像をかき立てた。 例えば、なぜ武漢に集中して新型ウイルスが拡散しているのか。 なぜウイルスを人に伝えた病原体、つまり中間媒介に当たる宿主が見つからないのか。 ウイルスのもともとの宿主はコウモリであり、そして石正麗の実験施設はまさにコウモリに関するウイルス研究における学術的な権威なのだ。 石正麗のチームはかつて2017年に、SARS(重症急性呼吸器症候群)ウイルスがいくつかのコウモリを起源とする、SARS型コロナウイルスが変異したものであることを突き止めた。 新型コロナウイルスの感染が爆発的に拡大して以降、石正麗のチームは1月23日に、生物学論文のプレプリント・プラットフォーム(注:論文原稿を査読の前にいち早く公開するためのサーバー)であるbioRxivで、「新型コロナウイルスの発見とそれがコウモリを起源とする可能性について」という研究論文を発表した。 その研究の中で、新型コロナウイルスと2003年のSARSウイルス(SARS-CoV)のDNA配列の一致率は79.

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新型コロナウイルス 日本国内の最新感染状況マップ・感染者数(27日11時時点)

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中国が発生源とみられる新型コロナウイルスが、日本でも感染を拡大している。 ウイルスの病原性は季節性インフルエンザ並みと言われているが、未知のウイルスだけに、予断を許さない。 新型コロナウイルスの元々の宿主はコウモリと推定されているが、動物のウイルスがヒトに感染する人獣共通感染症によるパンデミックは、これまで何度も人類を脅かしてきた。 新型インフルエンザだけでも、1918年のスペインかぜは全世界で5000万人ともいわれる死者を出した。 57年のアジアかぜ、68年の香港かぜ、そして記憶に新しい2009年のパンデミックインフルエンザだ。 過去4回のパンデミックのうち、アジア、香港の2回は、中華圏が発生源と言われている。 それに加えて02〜03年にかけてのSARS(重症急性呼吸器症候群)の流行、そして今回の急性呼吸器疾患(COVID-19)、さらには、鳥インフルエンザウイルス(H5N1)に感染した人が多発したのも中華圏だ。 なぜ、中華圏が発生源となるのか。 そのメカニズムを人獣共通感染症の第1人者である北海道大の人獣共通感染症リサーチセンターの喜田宏・特別招聘教授に聞いた。 /取材・構成=辰濃哲郎(ジャーナリスト) 喜田氏 過去2回のパンデミックが中華圏から 1月22日から23日にかけて、世界保健機関(WHO)が開いた専門家による緊急会議に電話で参加した。 中国・武漢での新型コロナウイルスによる感染拡大を受けて開かれたもので、WHOとして「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言するかどうかが注目された節目の会議だった。 会議では、誰かが発言するたびに中国側が意見を挟んでくるので、とても長引いた。 緊急事態宣言については、半分の参加者が賛成し、残り半分は時期尚早との意見で、最終的にはテドロス・アダノム事務局長の判断で宣言は見送られた。 私自身、あの時点では広がりを証明する情報が不足していると感じたので、妥当だったと思っている。 宣言を出そうにも根拠となる情報が少なすぎた。 中間宿主の特定が最重要 この会議で私が注文を付けたのは、感染しても症状を示さない人や、これから発症する人の数ははるかに多く、その時点での感染者数は氷山の一角に過ぎない。 このウイルスの伝播経路をきちんと調査することが重要だと説いた。 コウモリが宿主だと言われているが、直接ヒトに感染するとは考えにくい。 コウモリの中にいるウイルスが種を超えて感染する変異ウイルスを生んだ中間宿主が必ず存在するはずだ。 SARSのときも自然宿主としてコウモリが疑われたが、中間宿主は突き止められなかった。 生きた動物を売る市場にいた何匹ものハクビシンからSARSコロナウイルスが分離され、遺伝子配列もみんな同じだったという。 つまりハクビシンが中間宿主だと言うんだが、それは、おかしい。 私はヒトからうつったものじゃないかと意見した。 なぜなら、あちこちから集められたハクビシンなのに、全く同じウイルスなんてあり得ない。 きっと店の人が感染して、それがハクビシンに感染したと考えるべきだ。 なぜこんな話をするかというと、宿主や中間宿主を突き止めることは次の対策を考えるうえで重要なのだが、そのための調査は、予断を排して科学的にやらなければならない。 こういった疫学調査は難しいんですよ。 今回の新型コロナウイルスも、コウモリのウイルスが海鮮市場でセンザンコウとかヘビとかの中間宿主を介して広がったと言われているが、私も参加する国際獣疫事務局(OIE)の非公式グループが調査をすることになっている。 感染継代で病原性を獲得 本題のなぜ中国か、という問いに答えるためには、ウイルスとはどういうものかを説明しないと理解は深まらない。 インフルエンザウイルスを例に、少し説明しよう。 インフルエンザウイルスの自然宿主はカモだと聞いたことがある人もいると思う。 カモは夏にシベリアの営巣湖沼で生活し、冬には渡り鳥として南に飛んでくる。 ウイルスはカモの大腸で増殖し、フンとともに湖沼の水に排泄される。 でも、病原性はないから、カモも死なないし、他の鳥やヒトにうつることもない。 私たちがシベリアの営巣湖沼でフィールドワークをしていた90年代でも、現在でも、湖沼には様々な型の鳥インフルエンザウイルスが存在する。 冬には天然のフリーザーになるから、ウイルスはそのまま越冬する。 つまりカモとウイルスは共生しているんです。 ところが、そのカモが南に飛来して、他の鳥や動物に感染すると、それら宿主の体で増殖しやすい変異が起きてウイルス感染が拡大する。 中国南部ではとくに生鳥市場のように、水鳥と陸鳥が生きたまま飼われている環境で、アヒルやガチョウなどの水鳥からウズラなどのキジ科の陸鳥に、次いで同じ科の鶏に感染する。 ウイルスに感染した鶏が養鶏場に持ち込まれ、少なくとも半年以上、鶏の間で受け継がれて症状のあらわれない不顕性感染伝播を繰り返し、そこで鶏の全身で激しく増殖する変異ウイルスが登場する。 鶏舎の鶏が全羽死亡して初めて高病原性鳥インフルエンザの発生が明らかになる。 したがって、高病原性鳥インフルエンザウイルスの病原性は、あくまでも鶏に対するもので、他の種の鳥や動物に対する病原性ではない。 新型コロナウイルスも、こういった伝播経路を経てヒトに適合するウイルスに変異したのだろう。 だから、伝播経路の解明は大切なのだ。 この伝播経路の解明に欠かせないのが、ブタの存在なんだ。 鳥インフルエンザウイルスがブタに感染すると危険信号が灯る。 ブタはヒトと鳥の両方のインフルエンザウイルスに感染するレセプターを持っている。 レセプターとはいわば鍵穴のようなもので、ウイルスの持つ鍵に合致するような受容体だ。 ヒトと鳥のウイルスがブタに同時感染すると、呼吸器の細胞内で交雑してヒトに感染するようなウイルスが出現することがある。 これが遺伝子再集合と呼ばれる現象で、これまでヒトが経験したことのない亜型だと新型インフルエンザウイルスとなり、人間の世界でパンデミックを起こす。 カギを握るのは「ブタ」の存在 私は、カモ由来のウイルスがアヒルなどの家禽経由でブタに感染し、ヒトのアジアかぜウイルス(H2N2)が同時感染して生まれたのが68年の香港かぜ(H3N2)であることを突き止めた。 77年にシベリアから北海道に飛んできたカモから香港かぜとアジアかぜウイルスの遺伝子を持ったウイルスが分離された。 このことからパンデミックインフルエンザウイルスの出現機構の解明につながった。 全部、カモが教えてくれたことなんだ。 従来は大きな抗原変異と考えられていたが、どう考えても新しい遺伝子が入らないと生まれない。 この遺伝子再集合について、私が「ミキシング・ベッセル」(混ぜ鍋)と表現したら、専門家が新型ウイルスは中華鍋から出てくると勘違いしたのには驚いたが。 09年の新型インフルエンザウイルス(H1N1)も遺伝子解析から、メキシコ周辺のブタを介していることがわかっている。 スペインかぜも米国で流行する前にブタインフルエンザが流行していたから、ブタ経由だと考えられるし、アジアかぜもそうだろう。 学生に鳥インフルエンザウイルスをブタに継代する実験を命じたところ、継代3代目でヒトのレセプターに結合するウイルスが優勢になった。 アミノ酸が2個変わればヒト型になってしまうから、さして難しいことではない。 だから、パンデミックインフルエンザ対策で最も大切なのは、世界でブタの疫学調査を継続的に実施することだと主張して、すでに始まっている。 そうすればある程度は新型インフルエンザウイルスの亜型が予測できるはず。 今回のコロナウイルスもコウモリから直接、ヒトに感染したとは考えにくい。 ブタのような中間宿主がいるはずだ。 ウイルスの感染のシステムがわかると、中国がなぜ発生源になることが多いのかがわかりやすい。 歴史上わかっている範囲で言えば、人類が経験した4つのパンデミックのうち2つは中華圏から出ている。 そしてSARSもそうだ。 パンデミックではないが、鳥インフルエンザウイルスによるヒトへの感染も、すべて中華圏から発生している。 第1に言われているのは、先に述べたように生鳥市場の存在だ。 動物市場とか海鮮市場とも言われているが、生きた鳥や動物が密集しているから感染が繰り返され、その間にヒトに感染する能力を獲得する。 おそらく周辺では、これまでも原因不明の呼吸器疾患の流行などがあったはずだが、小規模で気づかなかったのか、インフルエンザと同じような症状で区別がつかなかった可能性もある。 生鳥・動物市場は、動物を宿主とするウイルスが種を超えてヒトに感染する温床になっている。 中国の生鳥市場 SARSのときも指摘され、一部改善されたとも聞くが、なかなかはかばかしくない。 だが、これは中華圏の文化のひとつで、頭ごなしに批判しても意味がない。 文化を尊重しつつ、世界的な公衆衛生の問題として理解してもらう必要がある。 「生で食べる」ことの危険性 それから中華圏には生のものを食べる習慣があるが、これは気を付けた方がいい。 あくまで私のウイルス研究の経験から言うのだが、鳥や動物が呼吸器で感染するより、なぜか食べて感染した方が症状は重い。 例えば、79年末から80年代初めに米国・ケープコッドの海岸に大量のアザラシが死んでいるのが見つかった。 私も米国研究者と行って調べたが、H7N7の鳥インフルエンザウイルスが呼吸器だけでなく脳からも分離されたひどい感染だった。 きっと感染した鳥を食べて死んだのだろう。 04年に日本で79年ぶりに鳥インフルエンザウイルスが出現して養鶏場の鶏が大量死した。 京都府の養鶏業者が野積みにした鶏の死骸を食べたカラスがたくさん死んだことがあった。 カラスはインフルエンザウイルスに対する感受性がさほど高くないが、食べるとやはり症状が重いのだと感じた。 ここから先は、有料コンテンツになります。 記事を単品で購入するよりも、月額900円の定期購読マガジン「文藝春秋digital<シェアしたくなる教養メディア>」の方がおトクです。 今後、定期購読していただいた方限定のイベントなども予定しています。

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なぜ中国・武漢は「新型コロナの発生地」になったのか?自然からの警告か?

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新型コロナウイルスはどのように発生してしまったのか 猛威を奮う新型コロナウイルスですが、あまりにも大きな被害を全世界に及ぼしています。 経済の停滞は、いずれ資金的な面で弱い人を追い詰めていくだろうと予想されておりますが、ヒシヒシとその足音を聞くようです。 あまりに唐突に出現した新型コロナウイルスなので、軍事からの派生だとか、様々な憶測が飛び交い、真実がはっきりしません。 不思議なのが、なぜ中国の武漢から発生したのかということでしたが、現代ビジネスの記事を読んで合点がいく点もありましたので、本文転載でシェアさせていただきます。 我々は全ての事象を謙虚に捉え、人類も所詮は大自然の一部であり、生かされているという自覚を強く持つ必要があるのかもしれません。 忘れ防止にしたいと考えています。 そもそもなぜ中国・武漢は「新型コロナの発生地」になったのか? 自然から人類への警告の可能性 青山 潤三 ネイチャーフォトグラファー なぜ「中国内陸部」なのか? 新型コロナウイルスの「発生源」について、ついに中国とアメリカの間で舌戦が始まりました。 トランプ大統領が「チャイニーズ・ウイルス」と発言したり、アメリカ政府高官が「武漢が発生地であることを忘れるな」などと次々に述べる一方、中国政府の報道官は「米軍が中国へ持ち込んだのだ」と主張し、物議を醸しています。 3月中旬の武漢(Photo by gettyimages) 2002? 2003年に感染が拡大したSARSと同様、新型コロナウイルスについても、野生のコウモリが発生源(ウイルスの一次宿主)である、という説があります。 その是非はひとまず置いておいて、先日こんな要旨の記事を目にしました。 〈SARS流行の時、ウイルスの宿主とされるキクガシラコウモリを調べるために、中国の専門家集団は雲南省の奥地へ調査に向かった。 なぜ、わざわざそんなところに調べに行く必要があるのか。 キクガシラコウモリだったら、広州の街中にもいるのに、見当違いの無駄な努力をしている。 中国のやることは理解できない〉 でも、この中国の専門家集団が取った行動は正しかったのかもしれない、と筆者は考えています。 現在、都市に住んでいるキクガシラコウモリは、おそらく人間の生活領域の拡大に伴って分布を広げた集団です。 しかし、キクガシラコウモリという種は、人間社会が営まれるはるか前から存在しています。 そしてそれは、現在私たちが身近に接することのできる集団とは、「生物学上の種」としては同一であっても、異なる存在です。 つまり、都会に棲息する個体を調べても、彼らのことを深く調べることはできない可能性が高いということです。 では、本来の性質を保持したキクガシラコウモリの集団は、どこにいるのか? それは、中国の奥地です。 そこは、地球上でも稀有な生物多様性を持つ地域なのです。 具体的にいえば、武漢を含む長江の流域とその周辺部。 長江は中国最大の河川であるだけでなく、世界でも、アフリカのナイル、北米のミシシッピ、南米のアマゾンと並ぶ大河です。 地史的な面での複雑さや、生物地理上の多様性においては、他の河川を上回るスケールを持っています。 その中間地点に四川盆地があり、その周辺を、多彩な性格をもつ山地帯がぐるりと取り巻いています。 盆地の西側から反時計周りに四川省、雲南省、貴州省、湖南省、湖北省、陝西省、甘粛省。 分かりやすく言えば、野生のジャイアントパンダの棲息地と、その周辺地域にあたります。 今回の新型コロナウイルスの発生地とされている湖北省(およびその省都・武漢)は、四川盆地を取り囲んだ山々から、長江の流れが東に突き抜ける「出口」に位置しています。 そして筆者は、この地域で新型コロナウイルスが発生したのは、この地域が本来持っている"生物多様性・特殊性"と、何らかの深い因果関係があるのではないか、と推察しているのです。 湖北省の西北部には、世界遺産の「神農架(シェンノンジャ)」山岳地帯があります。 もちろんマユツバではあるのでしょうが、この一帯は「原人」の目撃例が少なからず報告されているほどの「秘境」です。 さらに神農架に隣接する陝西省の秦嶺山脈は、ジャイアント・パンダの野生東北限であるほか、日本の佐渡島に再導入されたトキの、現存する世界唯一の野生地でもあります。 日本と同じ種、または姉妹種(最も血縁関係が近い種)が、2つの地域にだけ分布するという例は、トキのほかにも数多くあります。 筆者が長年調査対象としているオナガギフチョウ(日本の本州に固有分布する「春の女神」と呼ばれる「ギフチョウ」の姉妹種)や、ギンバイソウ(野生アジサイの一種で、関東地方西部から九州と、飛んで湖北省の山地に出現する)などが挙げられます。 稲作の発祥の地でもある 武漢の東北部に目を向けると、安徽省に跨る山地帯から、アマミノクロウサギ(あるいはその共通祖先種)の化石が出土しています。 武漢東北部の山地帯は、その国外における唯一の化石出土地なのです。 湖北省西部(武漢の西方)で、広い四川盆地を抜け出した長江は、再び両側に急峻な山が迫る「三峡」という、世界にも類を見ない特殊な地形を通過します(世界最大の「三峡ダム」はここに建設されました)。 その三峡から一つ山を挟んだ南の利川市には、かつては化石しか知られていなかったメタセコイアの現存野生株が自生しています。 「化石生物」が実際に生きていたというのは、ロマンのある話です。 さらに、そこから少し南の貴州省側に入った「梵浄山」という山では、ごく最近まで、日本固有種で近縁種が世界のどこにも知られていなかった「フジミドリシジミ」という蝶の姉妹種が、筆者の指摘に基づいて中国の研究者により発見されています。 また、武漢の西南方一帯、湖北省南部から湖南省北部付近にかけての地域は、稲作の起源地であるとも目されています。 湖南省の仙人洞・呂桶環遺跡では紀元前1万2000年ごろの稲作の形跡が見つかっており、稲作に関する最古の遺物のひとつであると考えられているようです。 そういえば筆者は、今年1月16日、すなわち「新型コロナウイルスの人-人感染」を中国当局が認め、そして日本と韓国で初めて新型コロナウイルス患者が確認されたのと同じ日に、「湖北省の長江流域に棲んでいた世界最大の淡水魚類・ハシナガチョウザメの絶滅認定」の記事を見ました。 湖北省の長江中流域に三峡ダムが作られたために、このチョウザメは絶滅に至った、と。 このニュースは、その後すぐに同じ湖北省発の新型コロナウイルスの報道ですっかりかき消されてしまったわけですが、これらの出来事も、実はなんらかの関係がある(もちろん直接的に、ではないでしょうが)ようにも思えます。 なぜウイルスは、いま現れたのか 新型コロナウイルスは、なぜいま出現したのか? その一次宿主がコウモリなどの野生生物だとすれば、それらの存在が、現在の社会とどのように関与しているのか? 根本的な解明のためには、目の前で起きている現象だけを議論するのではなく、そこに至る背景にまで遡るべきではないか、という想いがあります。 SARSと今回の新型コロナウイルスの感染拡大が、一次宿主たる野生のコウモリが媒介となってスタートした可能性は、おそらく相当に高いものと考えられます。 とすれば、ただ都市部の現象だけに注目するのではなく、背景にある自然の働きや、多様な生物を育む湖北省の山岳地帯をはじめとした中国奥地の生物多様性にも、注目する必要があるのではないでしょうか。 にもかかわらず、自然と野生生物の複雑さを念頭においた議論が全くなされていないことを、筆者は憂慮しているのです。 不思議なことが、ひとつあります。 これだけ世界中を騒がせているにもかかわらず、「新型ウイルス」には、「SARS」とか「MERS」のような、固有の名前がまだついていません。 海外で使用されている「COVID-19」は疾患の名前で、ウイルスの名前ではありません。 理由はいろいろ考えられます。 ウイルスの「種」としてはSARSと同じコロナウイルスであり、その一タイプに過ぎないので、固有の「種名」は付けられない。 あるいはSARSの「姉妹種」とは考えられるが、両者の関係がまだ正確に把握できていない。 早い話、正体がよくわからないまま、未だに「新型コロナウイルス」と呼ばれているわけで、そのことも不安を掻き立てる要因になっているのではないか、とも思われます。 急速すぎる近代化 筆者は、中国と日本を33年間に亘って、生物の調査を目的として行き来してきました。 長年中国のさまざまな場所を見てきましたが、近年の中国における急速な超近代化には、戸惑いを覚えています。 その戸惑いの多くの部分は、信じがたいほど劣悪な衛生環境と、外観上の「近代化」が同居していることにあります。 それは、なにも地方に限ったことではなく、武漢のような都市部においても同様です(筆者は中国が政治的に嫌いだからこう言うのではなく、実際に長期間を過ごしている実感から述べています)。 メディアは、今回の新型コロナウイルスについては武漢、前回のSARSでは広州、そしてあとは北京や上海などの大都会にのみ目を向けます。 しかし筆者は、今回の武漢における惨状と爆発的拡散の最大の要因は、メディアの無責任ともいえる煽りたてによって、診察の必要のない人たちまでが不安に駆られて病院に押し寄せ、パニックに陥ったことによる、と考えています。 実は筆者は、1月末まで中国の広東省に滞在していました。 皮肉なことですが、中国政府がギリギリまでウイルスの感染拡大を「隠蔽」していたことは、結果論ではありますが、よい効果もあったのではないか。 というのも、政府による「移動禁止令」は、春節での都市部から農村部への大移動が終わったタイミングでなされました。 それが都市部から人を減らし、武漢以外でのパンデミックの封じ込めに寄与したのではないか。 もう何日か早く「移動禁止」が発令されていれば、中国の各大都市は武漢同様、ウイルス感染者で溢れかえって、今よりも遥かに悲惨な状況に陥っていたのではないかと、筆者は思うのです。 これは何かの警告ではないか? 地方と都市部、自然環境保持と近代化、それぞれの役割分担。 都市も農村も、さらに人の手がほとんど及んでいない原生環境も、広大な中国という国は本当に多様な環境から成り立っています(それは規模の差こそあれ、日本に、あるいは他の世界各国でも同様ですが)。 そのことを忘れて、たとえば都市部における衛生管理などの問題にだけ目を向けていると、ことの本質を見誤るでしょう。 欧米をはじめ世界の広範囲で感染が急速に拡大しているいまは、目の前の対策に追われるのは当然でしょう。 しかしこれから、国どうしのヘイトの応酬や、「生物兵器説」の流布、米中による発祥の責任のなすりつけあいが激化するのだとしたら、これほど有害無益なことはありません。 多様な生物の「遺伝子のプール」たる中国の国土を再び見つめなおすこと、はるかな過去から引き継がれてきた自然との共存に舵を切ること、それこそが必要なのだと思います。 「新型コロナウイルス」は、ひたすら効率だけを求める「超近代化」に対する、自然界から人類への警告であると、筆者は感じています。 この警告をよく噛みしめて、謙虚に大自然の一部として生きていくしかないのかも知れません。

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